捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして

「俺達は酒場に行くが、イオレッタはどうする？」
「もうお腹に入りません……先に宿に戻りますね」
　男性陣はまだ食べ足りないみたいで、今度は座って飲んだり食べたりできる酒場に腰を落ち着けるつもりのようだ。
　さすがにこれ以上食べたら、腹痛を起こしてしまいそう。先に宿に戻ろうと、踏み出しかけた時だった。
　イオレッタの前に、一人の青年が立ちふさがる。彼は、イオレッタは見えていないかのように、後ろにいるクライヴに向かって声をかけた。
「クライヴ――ドラゴンはどこに行った？」
　声をかけてきたのは、クライヴとよく似ている青年だった。
　クライヴよりも全体的にがっしりとしている。腰には立派な剣を下げていて、いかにも腕が立ちそうな雰囲気だ。
（冒険者にしては、装備が変、かも）
　イオレッタもそれなりな長期間冒険者として活動しているからわかる。