捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして

　セルヴィハの背中に乗っていたイオレッタ達が、思わず耳を塞いでしまったほどの大声だ。あまりにも声が大きかったものだから、王宮の塔にすさまじい勢いで風が吹きつけた。
「ドラゴン――ドラゴンだ！　王族の方々を避難させろ！」
　きっちりと鍛えられているらしい騎士達は、ドラゴンを迎え撃つ準備を整え始めた。
「愚か者！　吾輩は、この国の者を送ってきただけだ！　ただし、この者達は罪人だがな！」
　なおも叫ぶと、悠々と庭園に降り立つ。ガシャンと音を立てて馬車が地面に下ろされた。
「セルヴィハさん、悪ふざけしすぎですよ！」
　イオレッタの非難も、セルヴィハは聞こえないふり。それはどうかとさすがに思う。
「陛下！　陛下にお話を！」
　馬車の中でも気丈に振る舞っていたらしい御者が、中から転げ落ちるようにして出てくる。
「俺達も降りるか」
　先に下りたクライヴが手を差し出してくれる。イオレッタは、その手をありがたく借りて地面に下りた。
　ぐるりとあたりを見回すと、ふと不思議な想いに囚われる。