捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして

「そうじゃなきゃ、俺達だって、こんな無様な負け方はしないさ」
　ブライアンが言うには、普段はこの辺りには出ないワイバーンが出現したのだとか。
　ワイバーンとはドラゴンの亜種と呼ばれている魔物だ。四本の脚と翼を持つドラゴンと違い、前足と翼が一体化している。口からは毒のブレスを吐き出す厄介な攻撃をしてくる魔物で、ワイバーンと遭遇してこの程度で済んだのならばたいしたものである。
　ワイバーンはなんとか退治できて、素材も持って帰ってくることができたらしいから、数日休むことになっても大きな収入減にはならないですむだろう。
「……怖いですねえ」
「採取の時も気を付けろよ。俺達の依頼と方向が同じなら一緒に行ってやるから――ああ、ちゃんと回復魔術については依頼するぜ？」
「大丈夫だけど、ありがとう」
　最初の勧誘の時がアレだったので、最初のうちはブライアンのことが苦手だった。幾度か顔を合わせているうちに、そこまででもなくなっている。