捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 クライヴの視線の先では、拘束された暴漢がもごもごと蠢いている。このまま街の警備隊に突き出されるのだそうだ。
「ほら、俺達君に迷惑かけてるしさ。新しい場所に行った時に知り合いがいるのといないのとでは、君の気持ちの持ち方も変わってくるんじゃないかなーって」
「私達、自前の馬車を持っているので移動は楽ですよ。ご一緒にいかがですか?」
 レオニードとタデウスも熱心に誘ってくれる。
 たいした荷物があるわけじゃないけれど、馬車でのお誘いは魅力的。
 それに、彼らともう少し一緒にいたいと思ってしまったのも事実。
「じゃあ、一緒に連れて行ってください。その方が、道中安心だと思うし!」
 今までなら、誰かと共に行動するなんて考えたこともなかったのに。
 なんで、彼らの誘いには乗ってしまうのだろう。
 自分でもわからないままイオレッタがうなずくと、彼らもまたほっとしたようにうなずいたのだった。
 
 * * *
 
その日、ベルライン領は幸福に包まれていた。
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