捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「――そもそも、お前がトラヴィスの心をしっかり掴んでおけばよかったのだ。その努力を怠ったのだから、当然だ」
 それに関しては何も言えない。貴族の婚姻に、愛だの恋だの持ち込んでくる方がどうかしているわけだが、トラヴィスの心を掴む努力はあまりしてこなかったので。
 けれど、父は最初からシャロンの味方。今回のことがなかったとしても、いずれトラヴィスとの婚約は解消されていたかもしれない。
 トラヴィスとシャロンが惹かれ合っているのに、イオレッタも以前から気づいていた。口にしなかっただけのこと。
「――お前のような娘を、この家に置いておくわけにはいかない。出ていけ」
「……そんな!」
 父の言葉に、シャロンは両手で口を覆った。けれど、その手の陰で唇がにんまりとした笑みを作っているのをイオレッタは見逃さなかった。
 ――いつもそうなのだ。
 何かあれば叱られるのはイオレッタ。何をしても誉められるのがシャロン。
 これ以上、この家にとどまる必要ある? ないな、絶対にない!
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