捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
ベルライン家に生まれた新たな精霊使いシャロンと、強力な精霊使いトラヴィスがついに結婚する日を迎えることとなったのだ。
いつの間にか、イオレッタの存在はなかったことになっていた。
領民の中にイオレッタを気にした人がいなかったわけでもないのだが「家を出て嫁いでいった」と聞かされれば「そうなのか」で納得するしかない。庶民は貴族の家に余計な口を挟むべきではないのである。
書類上はシャロンもベルライン家の正当な後継者である。となれば何一つ問題はなく、むしろめでたいこと。面倒事に巻き込まれそうなら、見て見ぬふりをする方がいい。
そんな領民達の思惑はともかくとして、二人の輝かしい未来を象徴しているかのように、青空が広がっている。頬を撫でる風は柔らかく、心地よい。
「よくやったな、シャロン。これで我が家も安泰だ」
「お父様、育ててくださってありがとうございました――って、嫁ぐわけではないのですけれど」
「ああ。トラヴィスは優秀な男だ。シャロンにふさわしいよ」
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