捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 うふふ、とシャロンは微笑んで、白いバラを中心としたブーケで顔を隠してしまう。
 ベルライン家の娘が結婚するのだ。最高に美しく装わなくては。
 真っ白なドレスには、真珠を使った刺繍をびっしりと施し、裾は長く引いている。長い髪を覆うベールは、南の国からはるばる海を渡って運ばれてきたもの。精緻な職人の仕事が見事な一品だ。
(本当、精霊使いとして目覚めることができて幸運だったわ……そうでなかったら、今頃ここに立っていたのはあの人だったはずだもの)
 あの時、シャロンはまだ幼かったけれど、この屋敷に来た時の衝撃は今でもくっきりと覚えている。
 馬車を降りたら、目の前にあるのは大きく白く立派な建物だった。赤い屋根が印象的で、柱に施された彫刻の蝶は愛らしかった。
 玄関ホールを入れば、目の前には真っ赤な絨毯の敷かれた立派な階段。踊り場から左右に分かれ、二階に続く階段の手すりはぴかぴかに磨き上げられ、柱同様見事な彫刻で飾られていた。
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