捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
「かしこまりました、お父様。そうさせていただきます」
 父の方に優美な一礼をし、トラヴィスとシャロンの方に向き直る。
「お二人の幸せを、心からお祈りいたしますわ」
 最後、微笑みを一つ。
 そして、イオレッタはトラヴィスをもてなしていた部屋を後にした。
 それはもう堂々と。
 自由って素晴らしい! この家からはとっとと出ていこう。
 応接間から自室に入っただけで、イオレッタは解放された気分満喫であった。
 革の鞄を引っ張り出し、さっと中身を確認。硬貨の入った革袋、数日分の着替え、薬に保存食料。
 母から譲り受けた宝石は、信頼できる人に預けてある。落ち着いたら、取りに戻ればいい。
(シャロンには、当主の資格はないけど、大丈夫かしら――ああでも、書類上は異母妹じゃなくて妹だものね)
 この国では、女性にも爵位の継承権がある。母亡き後はイオレッタが成人するまで父が当主代行、そして成人後にはイオレッタが後を継ぐことになっていた。
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