君のそばにいたい 〜『君が望むなら…』続編〜
「…条件がある」

 私はほんの少しの好奇心に駆られ、彼に条件を提示する。

 まず、人前では私と会わないこと。
 だいたい会えるのは、私の仕事が終わった時間からいつも夜に湯を浴びる時間まで。

 二つ目に、私の家には何があっても決して入ってこないこと。
 もちろん彼に私の本当の姿を晒さないため。

 そして、私が自由を奪われたと感じたらすぐに離れ、私に二度と近付かないこと。

「…あんたに、守れるのならね」

 私の皮肉を込めたその言葉を聞き、彼は穏やかに笑ったようだった。

「約束しよう。よろしく、アギー。僕は“シード”だ」


 そう、もし彼のしたことで私の気にするようなことがあったり、本当の姿が彼に知られたその時は姿をくらまそう。
 今の気楽にも思える生活ができなくなってしまうのは悲しいけれど、私は別の場所でもきっとやっていける。

 私はやっと、自分の好きに道を決められるようになったのだから…

 それに彼は歳上の方がいいと言っていた。私とは五つ前後は歳が変わらないよう。
 老婆でも良いというほどなのだから、きっと私の本当の姿になど興味を持たないだろう。

 それよりも、彼は私と一緒にいてどのような振る舞いをするのかが気になる。

 前のカイトとは違い、彼は行動力があるように思う。
 シードは軽い気性の男性なのだろうと言ったらそれまでだけれど、いくら歳上好きとはいえ“アギー”という老婆を理解しようとしたことには驚いた。

 私はそんな風変わりな彼が少々気になったのかもしれない。
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