君のそばにいたい 〜『君が望むなら…』続編〜
 熱に浮かされたような彼の声に、私は思わずそちらへ行ってしまいそうになる。
 それでもこらえながら首を振った。

「…こんな婆さんの顔を、あんたに触らせるわけにいかないよ。だがまあ、手で良ければ…」

 私は急いで隠しながら手袋をはめ直した手を、彼にそっと差し出した。

「ありがとう、アギー」

 彼は明るい声でそう答え、品のある仕草で私の手袋の手を取り甲に口付ける真似をする。

 思っていたよりも彼は育ちがいいのかもしれないと、私はその時ふと思った。


 それからも私は、彼と会うたびに次第に心が惹かれていった。

 彼は自分のことを語らない私に強くは干渉しようとせず、私に尋ねたいことがあるときは必ず前置きをしてからにしてくれる。

 私を気遣ってくれていることも、私を知りたいと思っているのを我慢してくれていることも伝わってくる。
 自分を好いてくれる相手というのは、ここまで自分を想ってくれることもあるのだと私は彼のおかげで知った。

 私自身も、そんな彼に応えたいと思い始める。

 そして私は仕事終わりからの彼との大切なこの短い時間を、とても待ち遠しく思うようになった。
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