君のそばにいたい 〜『君が望むなら…』続編〜
 彼があらためて私を呼ぶ。

「“アネア”、君をずっと探していたよ…。君はきっと、僕に会うことを望んでいなかっただろうけれど…」

 『アネア』は私の本当の名前。
 それを知る相手は、もう私のそばには…

「『カイト』は死んだ。大切な人を“亡くした”んだ。本当は愛していた相手に何も言ってあげられずに“見殺し”にしてしまった、その深い後悔から」

 “彼”は私にひざまずいた。

「…君が苦しんでいることも、毎晩夜中に屋敷を抜け出していたことも知っていた。僕は酷い男だ、君が結婚して僕のそばにいてくれることに甘えていたんだ。君が奪われたときも間に合わず、さらに再会して今まで君を騙していたことも…許してほしい、アネア…」

 間違いない。
 これと同じ穏やかな仕草で、私とかつてきらびやかな式場で生涯を誓い合ったはずの相手はただ一人…

「…カイト…貴方なのね…。貴方は、死んでしまったと噂になっていたわ…」

 私は今までそのことに気付かなかった自分が信じられなかった。

 それもそのはず。
 あのときのカイトと、今の彼とでは…

「去っていった君に、いつか償いたいと思っていたんだ。真っ直ぐに運命に向かおうと頑張る君がずっと好きだった。そして今度は自分の気持ちで君に想いを伝えるために、君に気持ちを伝える自信を持たずにいた“カイト”は死んだ。“生まれ変わる”ために」

 顔を覆っていた当布を外した彼は、先ほどの切り傷は残っているがまさしくあのカイトだった。
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