君のそばにいたい 〜『君が望むなら…』続編〜
「…貴方にも触れさせなかった身を、私はあのとき見知らぬ男に…。それに私は、貴方から逃げ出したのよ…」

 私は奪われた悲しみとともに、あの頃の孤独だった気持ちを思い出した。

 やはり彼は、自分の想いを私に告げられなかっただけ。
 私をこんなにも想っていてくれたのに…

 カイトは悲しげな表情を浮かべる。

「アネア…僕はまた君を苦しめてしまったね。僕は何も変わっていなかった。君の気持ちをしっかり考えず甘んじていた、あの頃と同じだ…僕はやはり、ここに来るべきではなかったんだ…」


 カイトが私を求めるはずはないと寝室を自ら離し、何かを共にと誘われても彼の忙しさに理由をつけて拒否。
 自分の特技であった料理すら、振る舞う機会を与えられても逃げ出した私。

 全て、彼の気持ちを確かめることをせずに逃げていただけだったのかもしれない。

 彼はそんな私のために全てを捨てて生まれ変わる覚悟をし、もう一度出会いからやり直したいと私を探し出してくれたのだ。
 将来有望な、貴族だったはずの彼が…

 私は“シード”と出会い、初めて恋する気持ちを知った。
 相手のことを知りたいと思うことも、一人で帰る寂しさも、自分のことを真剣に想ってくれる相手を嬉しいと思う気持ちも…

 シードもカイトも同じ人間で、姿を偽っていた事には変わりないけれど、それは自分も同じ。

 私が今の彼を想う気持ちに、偽りはないのだから。
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