君のそばにいたい 〜『君が望むなら…』続編〜
「…貴方にこれほど想ってもらえる相手は、本当に羨ましいものだわ…」

 思わずそう呟いてしまう。
 消え入るような声で。

 私の周りは異性どころか家族すらも、私の気持ちを理解しようとは思わなかったらしい。

 私は結婚したはずのカイトとも分かり合えるとは思えず、自ら逃げ出してきた。

 私はもう、一人で生きると決めた。
 そのために前の身元が分からないようにだけ注意を払い、今までひっそりとやってきたのだから。

「…貴女はいま、本当に自由なのかい?」

 彼が突然、穏やかな声でそう私に問いかける。

 一体何だというのだろう?
 彼は、私がいま自由では無いとでも言いたげ。

「アギー、貴女には自分らしく生きてほしいと僕は願っているんだ。僕の前だけでいい、自由に自分らしくいてほしい。“君”が僕の前でだけでも自由でいられるなら、僕はそばにいるから」

 彼の言葉に全く思い当たらない、『私らしさ』と『私の自由』。
 それに彼がいたところで、私が自由でいられるとは限らないのに…

「これ以上変なことを言うと、人を呼ぶよ…!」

 私は彼の言葉に混乱したままそう言ったが、彼の目はなお真剣だった。

「僕は貴女のためなら死ぬこともする。貴女とともに生きていたいけれど、貴女が自分の自由のため望むなら、僕は喜んで命を絶とう」

 私は彼との会話を諦めた。

 …彼はきっと気の毒な人間なのだろう。
 こんな老婆を探し人の誰かと勘違いした上に、ここまでの決心を打ち明けるなんて…

「…もう、好きにするんだね…!!」

 思わず私はそう言ってしまった。
 彼は目を輝かせて礼を言い、「また来るよ」と言い残して去っていった。
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