君のそばにいたい 〜『君が望むなら…』続編〜
 私はいつものように住処にしている、人目につきにくい街外れの掘っ立て小屋に帰ると、一人ぼんやりと考える。

 上流階級に生まれ、両親や周りの決める結婚をさせられた私。
 自由に生きることを望んでいた私も結婚をしてからは自分を殺し、夫であるカイトを立てるために懸命に振る舞っていたつもりだった。

 あの悪夢のような転機が訪れ彼の屋敷を出てから、私は自分を近くの海に身を投げて死んだことにした。

 それから身を隠しながら何ヶ所かを転々とし、この地に居付くようになってから老婆に身を偽って暮らすように。

 やっと縛られていたものから解放されていたはずなのに、確かに私は何かを忘れている。
 無性に妙な違和感にさいなまれることがあるから。

 それが何かは分からない。
 それを見て見ぬ振りをしたまま、私はずっと過ごしていたのだと思い出した。

 こうしてふと今の生活について考え込んでしまうのは、あの彼のせいだろうか?

 私は彼と、もしくは他の誰かと一緒になったところで、私に自由などありえるのだろうか……
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