悪役令嬢に捧ぐ献身
『わたくしを見てくださらない殿下など、もう要りませぬ!! かくなる上は……!』
『やめろ、シルヴィア嬢!!』
『いやぁ!』

 どんよりと濁った曇り空を背に、自らの胸にナイフを突き立てる女。

 血と共に溢れ出す禍々しい影が彼女を包み込むと、やがて美しい乙女の姿が歪み、異形のそれへと変わっていく。

 その化物は肥大化した強靭な腕をだらりと垂らし、血のごとき双眸で愛しい男を睨みつけた。


『わたくしから全てを奪った元凶を、この手で消してしまえばよい!!』


 愛憎に呑まれた悪魔はけたたましい笑声を上げ、二人に襲い掛かり──。


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