推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
「咲月さん?」
「はい」蛇ににらまれた蛙状態で、どこにも逃げ場はありません。
「これからよろしくお願いしますね」
「はい」半泣きで返事をすると「よろしい」と、軽くそのまま耳にキスされた。
 
 その後はあまり記憶がない。
 膝が崩れそうになった私を簡単に抱きかかてタクシーを呼び「今日はとても有意義な時間を過ごせました。ありがとう咲月さん」そう言って運転手さんにお金を渡し、車のドアが閉まる前にはきっぱりと
「逆らってもクビなので」と、私に言い切り笑顔を見せて手を振った。
 遠ざかる専務を首が痛くなるくらい目で追って、車の中でとんでもないことが起きたかもしれないと、今日の出来事を思い出そうとするけれど、カフェインとったのに頭が回らず、耳に残る甘い声に「クビ」と脅された言葉だけがぐわんぐわんと回っていた。
 大好きな推しの王子さまは、とんでもない策士かもしれないと、危険信号が鳴り響いていた。

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