推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚～私、身代わりなんですが！】スピンオフ

「明日も仕事でしょう。そんなに遅くならないので大丈夫ですよ。３０分ほど付き合って下さい」
　静かに走る高級車の運転席で専務はそう言った。スーツ姿で運転する横顔が美し……じゃなくて、しっかりしなきゃ。
　ラテを口にして今日は落ち着いた態度で過ごそうと決意して、流れる夜の街を見ていると、車はインターチェンジに進んでいた。
「高速ですか？」
「どうせなら綺麗な景色を見せたくて」
　でも３０分で帰れますか？不安がる私の顔に気づいたのか「きちんと家まで送りますから」と、軽く頭をポンポンとして笑顔を見せていた。
　頭ポンポンは反則です。専務は反則ばかりです。無意識に頬をふくらませたら「こらこら」って言い、片手で私のふくらんでいる頬を軽くつまむので、顔が真っ赤になってしまった。頭ポンポン以上の事をされてしまう。その動作は心臓に悪い。専務はあちこち海外に行ってるから、ボディタッチは普通なのだろうか。余計なことをしてしまった自分に反省する。ドライブ終わるまで心身が保ちますように。溶けないようにしなきゃ。ある意味ガチガチになっていた私だが、助手席から見る景色を見ると、心が踊り「わぁ」と歓喜の声が出てしまった。
　川に映り込む高層ビル群のネオンがなんて儚く美しいのだろう。大きな商業施設のビルを間近に見て迫力に驚いた。昼の景色には慣れているけれど、夜はこんなに違うんだ。
「綺麗ですね」素直に声を出すと専務は「でしょう」とドヤ顔を見せてきたので、なんだか笑ってしまい緊張がほぐれた。