推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
私の気持ちに関係なく、当たり前だけど時間は過ぎてゆく。
芽愛ちゃんも琉希も私にそれ以上の事は何も言わず、専務からは相変わらずの癒しLINEが届き、14日になってしまった。
バレンタインデーである。
今日お会いするってことは、チョコを渡してもいいのだろうか。フレンドリー専務のことだから普通に受け取ってもらえる気がする。逆に渡さないと失礼になるかな。あぁ専務のことになると考え過ぎてしまう。きっと山のようにもらうから、その一部として受け取ってもらえるだろう。渡せなかったら自分で食べようと、前の日にカカオ風味が高く、お値段も高いチョコレートを専門店でドキドキしながら購入してしまった。
専務はその日出張先のパリから朝に到着して、夜に会う予定だったけど飛行機が雪で大幅に遅れてしまったようで、私も職場でネットを気にしながら帰り時間になり、約束していた時間にも何も連絡はこなかった。
ドタキャンかな。
食事も取らずにベッドに腰をかけていると、冷蔵庫のブーンという音が小さい静かな部屋で響いていた。
スマホとチョコレートをベッドに並べ、チョコの赤いサテンのリボンを撫でる。
スマホは動かない。時計は午後9時半指している。モブキャラに連絡は必要ないか。首にかけたブルガリのネックレスを丁寧に外して箱に入れ、そっと箱を閉じる。
数時間前まで浮かれて胃が痛くなっていた自分を思い出して、ちょっと笑ってしまった。
明日は休みだし、このままもう少しだけ勝手に待たせてもらおうか。服がシワになるから横になれないけど我慢しよう。
たとえドタキャンされても、待ってる時間さえ私には幸せだから。