推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
 じりじりと時間が過ぎる感覚だった。
 待っても待っても来ないかもしれないのに、なぜか待ってしまう。
 無事、空港に到着しても疲れてまっすぐ家に帰ったか、そのまま誰かと会って食事に行ったか、もしかしたら、ああ見えても仕事のファーストの専務だから、仕事を片づけているのかもしれない。 
 わかっていても待つ自分に突っ込んでしまう。

 10時を過ぎた頃
 私は冷蔵庫から酎ハイを取り出して、着替えもせずに小さいテーブルの前に移動してプルタブを開けた。アルコールには弱いけど、このまま飲んでしまおう。よし、飲もう!!ツナ缶もあったはず。ツナの油が付いてもいいや。もう、どうでもいいっ!
 開き直って食欲はないけど何かつまみを作ろうとしていたら、スマホが鳴った。
 びくりと身体を緊張させ、スマホを見ると専務からの電話だった。午後11時は過ぎている。

『咲月さん。本当に遅くなってすみません』
「いいえ、いいんです」急に涙があふれてきたので、慌てて泣いた声だけはシャットアウトさせようと努力する。
『本当にごめんなさい』
「いいです。お仕事おつかれさまでした」声が震える。
『会いたい』
「えっ?」
『会いたい。外を見て』
「え?」私はスマホを持ちながらカーテンを開くと、そこにスマホを片手にした専務が立っていた。
< 43 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop