推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ

 抱かれてしまった。

 推しに抱かれてしまった。身体を重ねてしまった。エッチしてしまった。
 同じ空気を吸っているだけでありがたく、雲の上の存在なのに【甘い幸せに浸りたい】なんて乙女モードに流された後、とんでもないことになってしまったと青ざめる。

 その本人は私の隣で目を閉じてぐっすり寝ていた。疲れていたのだろう。
 この狭いベッドの上、裸で私を抱きしめながら熟睡するとは、らしいと言えば専務らしく微笑ましい。育ちのいい人は大物だと思ってしまう。
 まつ毛が長い。肌がツルツル。引き締まった身体だった。鍛えているのかな。
 とっても優しく抱いてくれた。思い出して青ざめた顔が熱を帯びた。すごく優しかった。
 その胸の中で私も目を閉じる。温かくて守られている気持ちになってしまう。
 大好きです。本当に大好き。
 
 そんな事を思いながら私もいつの間にか眠りについてしまったようで、次に目が覚めたのは専務の腕の中、電話の会話で目を覚ます。
 「すいません。今日はやっぱり休みます……ですね、それはおまかせします」
 私に気づいたのか、会話をすぐ終わらせてスマホを枕元に置いてまた抱き寄せる。
「ごめんね、起こしました?」
「いえ、大丈夫です」
 まだお互い一糸まとわずな素っ裸で抱き合っている事実が私を襲い、急に緊張してきた。
「おはよう」
「おはようございます」
「今日はお仕事ですか?僕は休みです。咲月さんは?」
「私は今日はお休みなんです」
 専務の身体から少し離れて、ブランケットを集めて身体に巻き付けようとするけれど強く阻止された。
「じゃぁずっと一緒に過ごせますね」
 嬉しそうにギューッと抱きしめて私の頬にキスをする。
 専務に溺れてしまいそうです。助けて下さい。
 
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