推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
「せっ、狭くなかったですか?」
 素肌が重なってる!会話、何か会話をしなければと焦る私とは反対に、専務はグイグイ迫りキスの雨を降らせる。
「狭い方が咲月さんと密着できたから嬉しかった」
 甘い言葉と甘い顔。その声までも甘いのは反則です。
「もう一回抱いていい?」
「いえ、あの、多少パニックになっておりますので、それはちょっと待って下さい」
 私がそう言うと「咲月さん」と、軽くため息をして専務はキスを止める。
「どうしてそんなに僕を拒否するの?」
「拒否といいますか……」
「どうしてパニック?僕が咲月さんを好きなのが迷惑ですか?」
 そう言いながら、また悲しそうな顔をする。本当にズルい。そんな顔をされて拒否する女性はいないでしょう。専務は反則でできている。
「……迷惑じゃないです」素直に言うと「よかった」と、抱きつかれた。専務は大型犬に似ている。その後で思い出したように「咲月さんにお土産があって」と、裸のままで立ち上がり堂々と冷蔵庫の扉を開けた。引き締まった身体だ。目のやり場に困る。私は下を向きながら起き上がり、胸元までブランケットを上げて待っていると、冷やされた小さな箱を渡された。
「昨日渡したかったけど。バレンタインのチョコです」
 隣にスッとまた隣に入りながら、優しい声でそう言われた。
「ありがとうございます」
 手のひらサイズの黒い小さな箱に、サテンの赤いリボンが飾られていて、とっても綺麗だった。
「夜中に思い出して冷蔵庫に勝手に入れさせてもらいました」
「気づかなかった」
「電気と暖房も消しておきました」
「すいません」何から何まで申し訳ない。ありがとうございます。
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