推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
「それが一番大切だと思うのですが」
「それはそうなんですけど……」
「身体の相性も良さそうだし」
「えっ!」
 とんでも発言に驚くと専務は微笑み私の頬にキスをした。
「僕は咲月さんに夢中です。価値観が違ったら楽しみましょう。僕が咲月さんのマイナス思考をプラスにしてあげる。咲月さんのどこがダメなのかわからない。咲月さんを困らせる僕の方がダメな男です」
「専務はダメじゃありません!」
 強く言うと若干引かれて苦笑いされてしまった。専務がダメ男なんてありえない。私の推しは完璧ですから!
「まだお互いに知らないことがあってもいいじゃないですか。これから知りましょう。きっと知れば知るほど咲月さんを好きになる自分が見えます。僕だって嫉妬深くて強引で、咲月さんを誰にも渡したくない」
「専務……」
「その専務って呼び方も変えましょう。キラキラしてないけど、名前の呼び捨てでいいですよ」
 キラキラしてないけどって、どこまで気にしているのだろう。いや、推しを呼び捨てなんて恐れ多くてできません。ブンブンと首を横に振ると笑われた。
「僕の嫌いなところを、ひとつずつ言ってもらえますか?」
「えっ?ありませんそんなところ」
「言わないと……身体じゅうにキスマークを付けますよ」
 そう言って私の身体を押し倒し、押さえつけてズルい顔で私を見下ろした。
「えっ……あの……」
「ほら、早く」
「あのっ……」
 首筋が熱い。専務の柔らかな唇が首筋から唇に流れ、私の唇を味わう。
「ごっ……強引です」
「うん」
「強引で……甘えた顔がズルいです。たまに見せる困ったような顔もズルいです」
「うん」
 専務の身体がズルズルと下がって、長い指を私の指に重ねながらも動きを抑えつけ、身体中にキスを繰り返す。柔らかな髪が甘くくすぐる。
「さっ……策士で、ちょっと甘えたがりかもしれません。キスも上手すぎて……その……」
「その?」
「とにかく……ズルいです」
 身体がとろけて頭も言葉も回らない。
「だから嫌い?」
「嫌いじゃないです」泣きそうな声でそう言うと
「よかった」って楽しそうな声を出し

 また抱かれました。

 推しは策士でした。勝てません。
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