推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
バレンタインの奇跡というのか
急展開のドタバタ劇というのか
まさか一気に推しに抱かれてプロポーズされたとは、想像もつかない展開で、あとから会話と行動を思い出すと、しっかり丸め込まれた気もする私だった。
その後は狭い私の部屋でお昼まで過ごし、昼から専務のタワマンに流れ、豪華なお部屋に圧倒されながらも、ベッタリベタベタ……されて、部屋の圧もさることながら、本人の圧も凄かったという。
「咲月さん、あぁ本当に可愛い」
「いいから、先に荷物を片づけましょう。お手伝いします」
専務が私から離れないので出張帰りのトランクが片付かない。
「荷物はそのままでいいから、ハウスキーパーさんに頼みましょう」
「そのくらいやりましょう」
思った通りの御曹司で、豪華なお部屋はとても快適だった。冷蔵庫の中身もしっかり作り置きやら、野菜や飲み物も入っていた。週二回ほどハウスキーパーさんがやって来てお世話になってるらしい。ハウスキーパーさん完璧です。
推しの荷物を触るなんて、モブごときが恐れ多いけど、ここまできたらお世話させて下さい。
「指輪は外したんですか?」
「失くしたら大事件なので」
値段を聞くのも失礼なくらい高級品だろう。私にその価値はあるのでしょうか。
大きなトランクふたつを目の前にして、専務は私をバックハグし、素早く左手の薬指に唇を寄せる。
「近いうちに咲月さんのご両親にお会いして、うちの両親にも会ってもらえますか?」
心臓が跳ねてしまう。それって本格的にプロポーズですよね。
「僕は指輪より咲月さんを失いたくないから」
私の不安な気持ちが見えたのか、そっと優しいキスをする。
「専務のご両親に認めてもらえますか?」
私は良家のご令嬢でも何もなく、ごくごく普通の女です。それも従業員です。
「それは大丈夫。僕が全力で守ります」
「でも……」
「ダメなら咲月さんの家の婿養子になりましょう」
「それはいけません!」
「僕は本気ですよ」