絶対にずっと好きだと証明しましょう
ユーゴは頭の中の記憶をそのときまでチャカチャカと巻き戻す。
その失恋の日の前日は、まさにユーゴが樹に効果的なはっぱをかけた、かけたつもりの日だった。
どういうことなのだ。
あの時、樹が楓のことをどう思うかと聞いてきたのは、ほかに好きな女性がいたからで、ユーゴに楓を譲ってもいいよということだったのか。
ユーゴの嘘話に特に焦る様子がなかったのはそういうことだったのか。

ハッパ全然かかってなかったじゃないか。
ユーゴは顔を顰めた。

「どうして樹に好きな人がいるってわかったんだ?」
「樹と会った前日、樹と彼女が腕を組んでいるところを偶然大学時代の先輩が見つけて写真を撮って送ってくれたんです」
「前日?」

前日は確か――ユーゴはまた記憶をチャカチャカ巻き戻す。

「そうです。私には仕事だって言っていたのに」

楓は胃が痛むかのようにみぞおちのあたりを手で押さえた。

ユーゴは鞄からスマホを取りして画面をクルクル動かると、それってもしかしてこいつ? と写真を楓に突き出した。

「あっ! そうこの女性です。ユーゴさんも知っている人なんですか?」
「まあな」
「ひどい。教えてくれればよかったのに」

肩を丸め一回り小さくなったような楓にユーゴが明かす。

「従妹だよ」
「はい?」
「俺の従妹で樹の妹。その写真は彼女が仙台から東京に出てきたとき、確か樹とランチに行った時の写真だよ」
「え、じゃあ私が振られた理由はなんですか?」

俺に聞くなよとユーゴが苦笑する。

「そんなに長くつきあっていたのに理由も聞かないまま別れたのかよ」
「それはそうですけど」
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