絶対にずっと好きだと証明しましょう
「楓を解放したい」

解放なんてされたくないんだよ。
楓は心のなかでつぶやく。

「うん、それがいい。で?」
ユーゴはどんな展開を期待しているのか先を促す。

「ユーゴ君、大事なとこだから少し黙っていてくれないかな」

樹に睨まれたユーゴは、はいはいとぞんざいに返事をして大げさに首をすくめた。

「樹、もういいよ。別れた上に解放されてもう十分。解放されて私の心はどこに行くの? もう十分だよ」

楓は目の前にたたんで置いた白いおしぼりをとって瞼を抑えた。
さっきレモンを絞った指を拭いたので柑橘系の香りがした。

「楓」

もういいというのに樹は続ける。

「楓の実験は終了だ」
「長かったな」

どうしても黙っていられないユーゴが合いの手を入れた。

「うん、わかったから」

楓は素直に承諾した。
もう3カ月前に一旦、受け入れた別れを。

「それで」と樹がまだ何か言おうとすると、ユーゴが何も聞かないうちから「それがいい」と賛成した。

「ユーゴ君、まじ黙ってくれないと刺すから」

樹から箸を向けられたユーゴは大げさに口にチャックのジェスチャーをした。

「で、改めて僕と付き合ってほしい。楓とまだ一緒にいたい」

ユーゴはにやっと笑って楓にウィンクし、楓はぽかんと口を開けた。

「それってどっきりとか詐欺じゃないよね」
「どんな詐欺だよ」樹が苦笑いをする。
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