絶対にずっと好きだと証明しましょう
「なぜでしょう?」
「見てるからじゃないかな」
「見てるって、なにをですか?」
「樹のお父さんは樹が幼いころに他の女性と蒸発して、3年後に戻ってきたけど、1年後、今度はお母さんに好きな男性ができて結局離婚した。お母さんはその人と再婚したものの数年で離婚して、また次の男と結婚。で、その3人目のお父さんとも離婚しかけていたころに、楓ちゃんが樹に告白したわけだ。物心ついてから一番身近な男女が年中別れてるんだから、もはや恋愛感情は続かないっていうのが樹のなかではスタンダードなんじゃないか、というのが俺の憶測。樹のお母さんの兄貴がうちの父親なんだけど、さすがに3回目もダメだったかとため息ついてたよ」

なるほど。
お父さんが長期航海する船乗りなら父親はいつも不在なのが当たり前。
両親がいつも喧嘩しているなら夫婦は喧嘩ばかりするもの。
お母さんが料理上手なら女性は料理ができるもの。
なんてふうに、育った生活環境はスタンダードとして刷り込まれていく。

「樹君は、お母さんが何度も離婚するのをどう思っているんですか、傷つくとか、お母さんが嫌いになるとか」

ドラマや小説の中ではよく親の離婚で子供が傷ついてぐれたり、親に反抗的になったりするシーンが設けられている。

「別に。ほら、もはやスタンダードだから。素直にクールに受け入れてるよ」
「じゃあ樹君自身も恋愛は長続きしないものっていう認識なのかな」

なんだか独り相撲みたいで、いや、最初から独り相撲といえばそうなんだけど、肝心の樹は土俵の外で、いやいや国技館の外にいて私の相撲なんて全く関心がないのではないか、そんな光景を思い描いて楓は空しくなった。
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