絶対にずっと好きだと証明しましょう
樹の“絶対はない”という考えに至ったルーツについて話し合っているうちに時刻は10時近くになっていた。
腕時計をちらっと見たユーゴは「よし、これから樹に電話しよう」と提案する。
コネチカットは朝の7時になったところだった。

「朝だから忙しいんじゃないかな」
「5分や10分平気だよ」

ユーゴが支払いを済ませて店を出る。
店の外に設置されたベンチに座ってユーゴがスマホを操作している間、楓は妙にドキドキした。

「もしもし」

スピーカーから平坦な樹の声が聞こえる。

「おはよう」とユーゴ。
「どうしたの?」
「樹から連絡がないって楓ちゃんが泣いていたから電話したんだ。今一緒に食事を終えたところだ。カメラ、オンにしろよ」

嘘だ。泣いてはいない。

すぐに樹の顔がスマホに映し出される。
1カ月ぶりに樹の顔を見て楓はやっぱりドキドキする。
インディゴブルーのボタンダウンのシャツを着ているので寝起きではないようだ。
少し痩せたのか頬のラインがシャープになっている。

「楓、泣いてたの?」

うんと答えたほうがかわいいだろうかなどとあさましいことを考えたけど、泣いていないと正直に申告した。
1カ月連絡をしないだけで泣くのかよ、と面倒に思われるのがおちだろうと思ったからだ。
< 32 / 116 >

この作品をシェア

pagetop