絶対にずっと好きだと証明しましょう
夏に帰国予定の樹に就活はどうするのかと尋ねると、テレビ電話の向こうで頬杖をつきながら「そうだなあ」と呑気に構えている。

「私はとりあえずOB訪問始めたよ。あとサマーインターンシップも応募してる。バイトさせてもらっているユーゴさんの会社も狙っているけど難しいかな」
「ふうん。僕はやりたい仕事がまだよくわからなくてやる気が起きない。楓は何がしたいの?」
「え?」

就活に関してはめずらしく樹よりも先に取り掛かっていた楓はリードしている立場から留学中の樹のことを案じていた。
でもどんな仕事がしたいのかと樹から就活の原点を問われ、ずるっと樹の後ろに引き戻された気分だった。
そうした根本的な問いはスキップし、とにかくどこかにもぐりこみたいという気持ちに突き動かされているだけで、けれどそんなことは口にだせず「商品企画とか販促とかしたいかな」と、楓はユーゴの部署の仕事を思い浮かべて適当に答えた。

「ふーん」

感度の低い樹の反応に楓は底の浅さを見透かされたようで恥ずかしくなり「でもまだなんとなくで、したいかなーって程度なんだけど」と嘘を重ねた。
この時点では楓よりも就活に後れを取っていたかのように見えた樹だが、7月に帰国するとすぐに外資系の大手IT関連企業で長期インターンシップを始めた。
アメリカにいる間に日本にもオフィスを構える外資系企業を数社訪問し、日本でインターンシップさせてもらえるよう頼んできたという。
結局そうなのだ。
樹はいつだって効率的にちゃくちゃくと物事を進めていく。
楓が心配する必要などないのだ。
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