絶対にずっと好きだと証明しましょう
「就職おめでとう! 乾杯!」

今春から社会人になった美幸が音頭をとり、ビールグラスを皆で掲げる。
4人掛けのテーブルに美幸と健夫、その正面に楓と樹が並んで座る。
土曜の7時に集まった店は、初めて4人で会ったダイナーだった。ほとんどの客が中ジョッキを飲んでいて、そのほとんどのテーブルにフライドポテトやフライドチキンが乗っている。
塩気濃いめの揚げ物を苦みのきいたビールの炭酸で流し込む。
やめられない、とまらない、痩せられないの三拍子。
そのせいかたまたまなのか、店内にいる食欲旺盛なグループ客はみな腹回りが太い。

「久しぶりね」

美幸はまず楓に笑いかけ、樹君には少し前に会ったけどねと付け加えた。

「私、営業部門で顧客開拓を担当してるの。それでウエブで効果的に広告展開する方法はないか樹君に相談したの」

樹が入社するIT関連会社は確かに多くのオンライン広告を扱う代理店のような業務も行っている。
楓は「ああ、そうなんですか」と納得はした。
したけど話してくれてもいいのにという気持ちも湧く。
もやっする。

「なんで話してくれないのさ」と声に出したのは健夫だ。

美幸と樹が2人で会っているだろうと予測し、それを仕方がないと受け入れながらもやはり気にはなるのだ。
楓も樹を見て目で尋ねたが、樹は意図を察してはくれず、楓を見つめ2回瞬きしてから正面の2人に視線を戻した。
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