絶対にずっと好きだと証明しましょう
タクシーに乗って帰っていく健夫と美幸を見送って、楓と樹は歩き出した。
途中コンビニで缶ビールを買って、前と同じように少し歩いたところのモスグリーンの歩道橋を上り、橋の真ん中でビールを飲みながら下を走る車を眺めた。
片側にはテールランプの赤い光が、反対側には白や黄色のヘッドライトの光が続いている。
ビールを半分くらい飲んだところで、日本ではあまり見かけない水色の大きなキャンピングカーが見えた。

「あの大きな車で一緒にどこか行くならどこがいい?」

楓は腕を伸ばして走ってくるキャンピングカーを指した。
うーんと樹が考えている間にキャンピングカーは橋の下を通り過ぎていく。

「モニュメントバレーとか」
「あ、いいね」

テレビや写真でしか見たことがないけれど、突き抜けるような青空と、ごつごつとした錆色の大地に囲まれたまっすぐな道。
季節は夏がいい。
強烈な日差しに焼かれた皮膚を、髪を、からからに乾いた風がさらっていく。
ヒリヒリした感覚が腕を撫でたような気がして、楓は自分の腕に手を当てた。

「楓」と呼ばれてアメリカの広大な大地にさまよっていた意識が東京の、品川区の、歩道橋の上に戻り、楓は樹に振り向く。

「とりあえず免許を取りに行こう」

楓は笑って頷いた。
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