絶対にずっと好きだと証明しましょう
映画でも美術館でも、空いた時間にふらりと1人で行ってしまう。
「なんで誘ってくれないの?」と楓が聞けば「だって急に見たくなったから」と言い、「でも声かけてくれてもいいじゃない」と文句を言うと「わかった、今度は誘うよ」と、むくれる楓の頭をなでて笑う。
だけど、たいていは1人で行ってしまうのだ。

それが大学の講義が終わってラインをチェックすると、めずらしく樹から「これから映画を見に行くけど行く?」と入っていた。
すぐに「行く!」と返信したのにレスがなかった。
もう1時間も前のことなので、多分すでに映画を見ているのだろう。
講義中はラインの着信音を止めていたので気づかなかったが、途中でラインをチェックすればよかったと楓は後悔した。

何の映画をどこで何時から見るのか、何も情報が書かれていなかったので、楓は追いかけようもなかった。
それでも誘ってくれたことに満足していた。
なのに映画を見終わった樹から「映画終わって美幸さんとご飯を食べに行こうって誘われたけど来る?」というラインが入って気分が急降下する。

美幸は樹と同じゼミにいる1年上の先輩で、最近ちょくちょく樹の会話に登場する。
少し前に彼氏と別れたというどうでもいい話も聞いた。
頭が良くて、はっきりした顔立ちの美人でスタイルもいい。
見た目、美幸と樹はお似合いで、2人を恋人同士だと勘違いしている人も多いのがまた癪に障る。
そして寂しいことに、樹には楓という彼女がいるということはあまり認知されていない。
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