絶対にずっと好きだと証明しましょう
「楓、ごめん。免許とれそうもない」

樹からそう懺悔された楓は半泣きになった。
そもそも樹は大して楓と旅行に行きたいわけではなかったのだ。
それなのにものすごく期待して楽しみにしていた自分がいけないのだ。
そう怒って見せた。

「もういいよ。樹はいつだってそう。私以外の誰かと行く映画とか、一人で行く海外旅行とか、私以外と一緒の植物館とか、そういうのが好きなんでしょう。私なんてどうでもいいんだよね」

楓は大いに拗ねた。

「そんなことないだろ」

のどかな樹の言い方がさらに楓を刺激する。

「あるよ。大学生になってから旅行に行ったことないじゃない」

楓がめずらしく本気で怒っているのをようやく察した樹はやはりめずらしくたじろいで、「楓、落ち着け。電車で行こう。ユーゴさんに伊豆の部屋だけ借りて電車で行こう」と代替案を提示した。
そして、リゾートマンションの部屋を借してくれと頼んだ樹にユーゴが出した条件が「自分も行く」だったのだ。

「その代わり車も俺が出してやる。嫌なら部屋は貸さない。」

そう樹を脅し、樹が渋ると「運転してやるんだから喜べよ、部屋は2部屋あるから別にいいだろ、従弟が傷心状態なんだから労われよ」と逆切れされてほぼ強制的に卒業旅行と傷心旅行を合併させたドライブ旅行になってしまったというわけだ。
樹は楓にまた拗ねられると思ったが、話を聞いた楓はとにかくドライブ旅行が実現できることが嬉しかったので別にいいよ、楽しそうだねと喜んだ。
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