絶対にずっと好きだと証明しましょう

ユーゴの誘い

土曜の午前10時。
「着いた」というラインを見て家の外に出ると、鮮やかなコバルトブルーのアルファロメオのボディにユーゴがもたれて待っていた。
やめてくれと頼んだのに興味津々で玄関から顔を出した楓の母にユーゴはにっこり笑い「初めまして。同じ会社で働いている作間ユーゴです。今日は楓さんをお借りします」と爽やかに挨拶をした。

からりと晴れた夏の空と太陽を反射して光る車に負けないくらい輝くユーゴの笑顔。
楓の母もつられたように「楓がいつもお世話になっています」と笑顔をこぼした。一目見てユーゴを気にいったことがわかる。「よろしくお願いします」とまるで遠足に行かせる子供を先生に託すかのように丁寧に頭を下げ、ユーゴも「はい、行ってきます」と屈託なく答えて出発した。

「車、きれいな色ですね。かなり目立ちますけど」
「ああ、気分が明るくなるだろ」

夏空に勝ち誇ったようにコバルトブルーのボディを輝かせ、車は軽快にスピードを上げていく。

「で、どこに行くんですか?」

樹との週末のデートが今週もボツってしょげ楓にドライブでも行くかとユーゴが提案してくれた。
楓は行きますと即決したが行き先は聞いていなかった。

「奥多摩。バーベキューできるし川に入って涼めるし。バーベキューの材料も用意して積んである」
「おお! いいですねー。ああ、言ってくれればタオルやビーサンを持ってきたのに」
「それも用意した。あとは飲み物を途中で調達しよう。あ、コテージもあるから泊るなら歯磨きセットと替えの下着も必要だけど」
「いいですねー、と言いたいとこですがやめておきます」
「そうだな。お母さんに挨拶しちゃったし、俺の好感度が下がるな」
「母の好感度とかの問題ではなくて」
「じゃあどういう問題?」
「明日は大学の先輩と会う約束があるので」
「なんだ、それだけの問題?」
「いえ、もちろん違います」

慌てて否定する。
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