絶対にずっと好きだと証明しましょう
夕食の時間にはまだ早く、みんなそれほど空腹ではなかったので、サラダ、フレンチフライ、チキンナゲットと、あとはビールを頼んだ。

初めての顔ぶれなのでお互いの馴染み加減を確かめながら、話は浅くとりとめなく流れていく。
2杯目のビールを飲みながら健夫が斜め前の樹をじっとり眺めながら言う。

「それにしても日向さんの彼氏ってどんな人かと思ったらイケメンで驚いちゃった。どっちかといえば美幸さんの彼氏に見えるよね」
「どういう意味よ」

楓はテーブルの下で健夫の脛を蹴った。

本当のことだけど本当のことだから腹が立つ。
美幸も否定はせずに「そう?」と、右頬にかかった髪をかき上げた。小さなダイヤのピアスがきらりと光る。
多分「そう?」ではなく「そうよね」と断言したかったに違いない。
樹は興味なさそうに、実際興味がないのだろう、オニオンリングを口に運ぶ。

「こんなモテる彼氏だと楓ちゃん心配でしょう。樹君、誰にでも優しい女たらしだし」

美幸がねっとりした視線を楓に送ってくる。

「女、たらしてるの?」

楓は隣でオニオンリングをもぐもぐさせている樹の頬を指でつついた。
樹は「たらしてないよ」と言って、オニオンリングの油でてらてらした指を楓の手の甲にすりつけた。

「あ、やだ! なんでこういう子供みたいなことするかな」

楓はナプキンで手の甲の油を拭きとり、それを樹の掌に押し付けると、樹はそのナプキンで自分の指をぬぐった。

「そう? 私、いろいろうわさを聞くけど」

笑っているようで笑ってない目で言う美幸に「普通そーいうこと彼女の前で話します? 興味あるけど」と健夫が釘を刺すと、美幸は「あ、ごめんなさい。つい……」と楓に謝った。

つい、ではなく、わざと、だろうけど。
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