絶対にずっと好きだと証明しましょう
「でもね、樹君が本気で私に興味を持ってくれたことなんて一度もなかった。頑張っても暖簾に腕押しみたいに捕まえられそうで捕まらない。だから楓ちゃんが妬ましかったのよ」
「それは私も同じです。樹から特別に好かれている実感がいまだにない、というより大して私のこと好きじゃないんだろうなっていう気持ちの方が強くなるばかりです。ずっと片思いしてて、そのうち相思相愛になるのかと思っていたのに実感がない」
「でも一応唯一の彼女じゃない。それも12年もの長い間」
「一応そういうスタンスですけど……」
「そんなに不安ならやめたら?」

楓はグラスに残った白ワインを飲み干した。
空いたグラスにワインをつぎ足しながら美幸が「でもさ」と言う。

「いいなって思う」
「え?」
「だって大好きな男がそばにいてくれるならそれだけで幸せじゃない。それくらいの覚悟でいたら?」
「それはそうですけど」
「そういう悶々とした恋の悩みっていいわねえ」
「どこがいいんですか」
「だって結婚して妻になって親になるとそんな切々と考えていられないのよ。すっぴんで旦那起こして子どものオムツを変えてご飯の用意して洗濯して掃除して。ドキドキしている暇なんかなくてかわりにずっとバタバタしてる。だから羨ましいわ。そういう相手を思って悩んじゃう恋愛が」
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