絶対にずっと好きだと証明しましょう
一人ベンチに取り残された樹は美幸が一方的にまくしたてた言葉を頭の中で読み込んでいた。
他の女とデートしていたというのは美幸の勘違いだ。
あれは最初の父親の娘でつまり実の妹だ。今は奈良県の田舎の診療所で看護師をしていて、毎日むちゃくちゃ忙しいらしくめったに東京には来ない。
気づけば3年ほど会っていなかった。
それが今日になって東京にきたからランチでもしようと急に連絡があったのだ。
1時間ぐらいならとランチをしていただけなのに、勘違いされたのは妹と腕を組んでいるところを見られたからだろう。
妹は母にも父にも兄の樹にも、女友達でも男友達でも、だれとでも腕を組む癖がある。
妹が言うには腕を組んだ方が安心感があるし歩きやすいそうだ。
美幸から楓にすぐ報告がいくだろうが単なる誤解だ。
その前に「美幸さんに久しぶりに電車の中で会ったよ。たまたま妹と一緒にいたところを見られて浮気していたのかと怒られた。妹だって釈明しようと思ったのに文句を言うだけ言って去っていったよ」と伝えればいいだろう。
楓はきっと美幸さんらしいねと笑うに違いない。
今まで女性に関することで楓から問い詰められたり文句を言われたりしたことはなかった。
りか子や美幸に対しては不安な素振りを見せたことはあったけど、それは大学時代のずいぶん昔の話だ。
楓と樹の関係は安定している。
喧嘩もしていない。
樹が仕事で忙しく会えない日が続いても、部屋に女もののハンカチを見つけたときも、楓は特に気にすることもなく2人の間に波風がたったことはない。
だから気にする必要はない。
ないはずなのに樹の頭から美幸の言葉が離れない。
――楓が悩んでいる――
――本気で私のこと、好きじゃない――
――ユーゴ君の話をする楓は楽しそう――
どれも樹の知らない、思ってもみなかった楓。
不意打ちは衝撃が強い。
――そろそろ解放してあげてくれないかな――
樹は親指でみぞおちを抑えた。
他の女とデートしていたというのは美幸の勘違いだ。
あれは最初の父親の娘でつまり実の妹だ。今は奈良県の田舎の診療所で看護師をしていて、毎日むちゃくちゃ忙しいらしくめったに東京には来ない。
気づけば3年ほど会っていなかった。
それが今日になって東京にきたからランチでもしようと急に連絡があったのだ。
1時間ぐらいならとランチをしていただけなのに、勘違いされたのは妹と腕を組んでいるところを見られたからだろう。
妹は母にも父にも兄の樹にも、女友達でも男友達でも、だれとでも腕を組む癖がある。
妹が言うには腕を組んだ方が安心感があるし歩きやすいそうだ。
美幸から楓にすぐ報告がいくだろうが単なる誤解だ。
その前に「美幸さんに久しぶりに電車の中で会ったよ。たまたま妹と一緒にいたところを見られて浮気していたのかと怒られた。妹だって釈明しようと思ったのに文句を言うだけ言って去っていったよ」と伝えればいいだろう。
楓はきっと美幸さんらしいねと笑うに違いない。
今まで女性に関することで楓から問い詰められたり文句を言われたりしたことはなかった。
りか子や美幸に対しては不安な素振りを見せたことはあったけど、それは大学時代のずいぶん昔の話だ。
楓と樹の関係は安定している。
喧嘩もしていない。
樹が仕事で忙しく会えない日が続いても、部屋に女もののハンカチを見つけたときも、楓は特に気にすることもなく2人の間に波風がたったことはない。
だから気にする必要はない。
ないはずなのに樹の頭から美幸の言葉が離れない。
――楓が悩んでいる――
――本気で私のこと、好きじゃない――
――ユーゴ君の話をする楓は楽しそう――
どれも樹の知らない、思ってもみなかった楓。
不意打ちは衝撃が強い。
――そろそろ解放してあげてくれないかな――
樹は親指でみぞおちを抑えた。