絶対にずっと好きだと証明しましょう
未沙が働いているのは病院というより山中のぽつんと診療所だ。
医師が1人と看護師が3人で診療所を回している。
だからゆっくり休暇を取る余裕がない。

ユーゴの話に補足すると、久しぶりに2日間休みが取れたので昨日から1泊で東京にやってきた。
けれど未沙が奈良に移り住んでからずっと親しくしてくれている道さん(未沙の家から15分くらい離れた場所に住んでいる76歳の女性)が今日の夕方突然倒れて診療所に運ばれたので、休暇中ではあったが同僚看護士が連絡してくれたのだという。

なんですぐにユーゴに連絡しなかったのかといえば「慌てて新幹線に飛び乗って俺のことを思い出したのは奈良に帰って、その人の呼吸が落ち着いた後だってさ。ひどくないか、お前の妹」

「そうだね、ユーゴ君の従妹はひどいね。でも自分から連絡すればよかったじゃないか」
「もちろんしたよ。でも電話もつながらない、ラインも既読にならない。事故にでもあったんじゃないかって心配したし散々だ」
「で、僕にご馳走がまわってきたんだね」
「おまえがきっとまだ働いているから早く連絡してあげてよって、なぜか急かされてな」
「美味しそうだ」
「うまいよ、俺が作ったんだから。あとパスタもあるから全部食べていけよな」

樹は細身だが食べっぷりはマッチョな体育会系男子と変わらない。
食べても太らないので、徐々にウエスト回りを気にし始めた同僚からはよく羨ましがられる。
同じチームで働いている27歳のアメリカ人のエンジニアは食事を制限し、ジムに通ってダイエットを始めたが、いつまでたってもぽっちゃりした体のままで、一緒にランチに行くと「なんでそんなに食って太らないんだ。変な薬でもやっているんだろ」と、大盛りの皿をたいらげる樹をいつも恨めしそうな目で見る。
楓も「樹のお腹の中って、絶対に虫が住んでいるよね」と、目をキラキラ輝かせて気持ちの悪いことを言う。
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