絶対にずっと好きだと証明しましょう
そのころ楓は美幸さんから送られてきた写真を見てひきつっていた。
心臓が。
駅のホームで樹と未沙が並んでいる、例の写真だ。

『迷ったけど送ることにした。やっぱりユーゴさんの方がいいと思う』というコメント付きでラインに届いた写真の2人は、同じ雰囲気をまとっていてとてもお似合いだと楓は客観的に、素直に思った。

樹が他の女性と一緒にいるところは今まで何度も目撃してきた。
それでもくじけなかったのは、樹が誰に対しても心を開いていないことが感じられたからだ。
どんなにきれいな笑顔を彼女たちに向けていても、プラスチックみたいだと楓は思っていた。
大丈夫、樹の心は奪われてはいないと。
だけど、今回は違う。
写真からでも樹の穏やかな笑顔にはこれまでにない彼女への愛情を感じる。
スマホの画面に映る樹の優しい目を人差し指でなぞる。

「彼女のこと、本当に好きなんだな」

そりゃそうだ。
兄妹なのだから。
でも、楓は知らない。
いよいよ樹に本命が現れた(という思い込み)衝撃は大きい。

せっかちな美幸さんが夜の10時も過ぎてこの写真を送ってきたのは本当に迷ったからだろう。
そう美幸さんの気持ちを推測しながらも、週末の夜、楓はずぶずぶと沼に沈んでいくようだった。
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