絶対にずっと好きだと証明しましょう
ボタンの掛け違い
前に何度か行ったことのあるこじんまりとした和食の店に入った。
枝豆、煮魚、鶏の炭火焼きとビールを頼む。
いつもなら見てきたばかりの映画についてあーだこーだと感想を言い合い盛り上がる。
しかしこの日は楓が何を言っても樹の反応は薄く、ぎくしゃくとした空気ばかりが流れていく。
ビールから日本酒に替え追加した料理もなくなってくると、楓は樹がいつ彼女の話をするのかと落ち着かなくなってきた。
その雰囲気を悟った樹が「もしかして楓も何か話がある?」と真剣な眼差しを向けてくる。
「え?」
「そわそわして落ち着かないから」
「それは――」
樹からの宣告を恐れているからだ。
いっそ、美幸から送られてきた写真を見せて、樹の話ってこのこと? と、自分から聞いてすっきりさせようか。
そう考えて楓がスマホに手を伸ばしかけると「いいよ、楓の好きにして」と樹がいう。
楓はまた「え?」と聞き返した。
「もし楓が他の人と一緒にいたいならそれでいいから。もう12年だし、高校生のときの約束とか気にしなくていいから」
言っている意味がわからないんですけど、とは言葉にできず、でも不可解さを吐き出すように楓は口を半開きにして樹を見つめた。
――男の人ってずるいから、別れたいと思っても自分からは言い出さないでフェイドアウトを好むから――美幸の声がまたベールのように楓の思考を覆う。
まるでお告げのようだ。
枝豆、煮魚、鶏の炭火焼きとビールを頼む。
いつもなら見てきたばかりの映画についてあーだこーだと感想を言い合い盛り上がる。
しかしこの日は楓が何を言っても樹の反応は薄く、ぎくしゃくとした空気ばかりが流れていく。
ビールから日本酒に替え追加した料理もなくなってくると、楓は樹がいつ彼女の話をするのかと落ち着かなくなってきた。
その雰囲気を悟った樹が「もしかして楓も何か話がある?」と真剣な眼差しを向けてくる。
「え?」
「そわそわして落ち着かないから」
「それは――」
樹からの宣告を恐れているからだ。
いっそ、美幸から送られてきた写真を見せて、樹の話ってこのこと? と、自分から聞いてすっきりさせようか。
そう考えて楓がスマホに手を伸ばしかけると「いいよ、楓の好きにして」と樹がいう。
楓はまた「え?」と聞き返した。
「もし楓が他の人と一緒にいたいならそれでいいから。もう12年だし、高校生のときの約束とか気にしなくていいから」
言っている意味がわからないんですけど、とは言葉にできず、でも不可解さを吐き出すように楓は口を半開きにして樹を見つめた。
――男の人ってずるいから、別れたいと思っても自分からは言い出さないでフェイドアウトを好むから――美幸の声がまたベールのように楓の思考を覆う。
まるでお告げのようだ。