時をこえて、またキミに恋をする。
神社の御神木である大きな桜の木。

その幹にぽっかりと空いたうろが、なぜか赤紫色にぼんやりと光を放っている。


…こんな光景、今までに見たことがない。


さらに驚いたことに、その光の中に影が見える。

目を凝らすと、その影は徐々に人型となり――。


パッと一瞬にして光が消えたと同時に、だれかがその下にうつ伏せになって倒れていた。


おそらく…人。


しかし、わたしは今さっき見た光景を理解するのに時間がかかっていた。


わたし…、もしかしてまだ夢を見てる?


だって、雨戸を開けて外を見たら、御神木の桜の木のうろが赤紫色に光っていて――。

そこから人が現れた…?


そんなこと、現実で起こるわけがない。


そっか。

やっぱりこれは夢なんだ。


そう思って頬をつねってみたけれど、なぜか痛かった。
< 10 / 279 >

この作品をシェア

pagetop