時をこえて、またキミに恋をする。
わたしはおそるおそる、その幽霊に歩み寄った。


黒髪に近い濃紺の短髪。

秘色色の着物に、錆浅葱色の袴をはいた男の子だ。


…この男の子、どこかで……。


「あの〜…」


そばまで行くと、わたしは声をかけた。

しかし、反応がない。


「すみませ〜ん…。ここで寝てたら、風邪引きますよ〜…」


と言って、気づいた。

幽霊なら、風邪なんて引かないということに。


「聞こえてますか〜?」


しゃがみこんで、指先で肩の辺りをツンツンと突つく。


起きる気配はない…。

…どうしよう、お父さんを呼んできたほうがいいかな。


そう思って立ち上がってみたけど、わたしはすぐにハッとして幽霊のほうを振り返った。


待って…、今…。

…触れた!?


幽霊って…触れるの!?


もう一度ツンツンしてみるけど、…やっぱり触れる。
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