時をこえて、またキミに恋をする。
背中からわたしを呼ぶ声がする。

振り返ると、宗治がわたしに向かって手を振っていた。


「いたなら、声かけろよな」

「…あ、うん。…ごめん」


宗治に見つかってしまい、わたしは手招きに誘われるように宗治のもとへおずおずと向かった。


「眠れねぇのか?」

「ううん。風が気持ちよかったから、ちょっと散歩しようと思って」

「そっか」


わたしたちは、桜の木の幹にもたれながら座り込む。


「どうだ?こっちの時代もいいもんだろ?」

「そうだね。都子姫も壱さんも、お屋敷の人たちもみんなよくしてくれるし」

「だろ?都子姫はみんなに優しいし、華道も茶道もお琴だって、なにをさせてもうまいんだ。それに、たまに天然なところがまたかわいい」


宗治は、まるで自分のことのようにうれしそうに話す。
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