時をこえて、またキミに恋をする。
遠くのほうからは、消防車のサイレンも聞こえる。


「…あっ、見て!あたしたちがいた部屋のほうにも火が…!」


七海が指さすほうを見ると、風の影響で火が燃え移り始めていた。


突然の火事で驚いたけど、宿泊客や従業員は全員避難できていて、取り残された人がいなくて本当によかった。


――しかし、わたしの額から冷たい一筋の汗が流れる。


…違う。

全然よくない。


わたしは、とんでもないことを思い出してしまった。


火の手が迫る、わたしたちの部屋があった場所。

そこに、宗治から預かった『桜華』を置き忘れているということに…。


「…どうしよう、七海」

「ん?…どうかした?」

「わたし…、部屋に大切なものを置いてきちゃった…」


ことの重大さに自然と声が震えた。


「取りにいかないと…!」
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