時をこえて、またキミに恋をする。
「…ちょっと都美、なに言ってるの!?みんな手荷物を置いて逃げてきたから、こうして無事だったんだよ!?命よりも大切なものなんてないよ…!」


そう言って、必死にわたしを説得しようとする七海。


たしかに、命よりも大切なものなんてない。

――だけど。


『その刀は、俺の命よりも大切なものなんだ…!』


宗治にとって桜華は例外だ。


見たところ、燃えているのは奥のほう。

わたしたちがいた部屋は手前のほうだ。


今なら…まだ間に合う。


「七海、ごめん。…あるんだよね。命よりも大切なものが」


わたしは、煙が上がる宿を真正面にして見つめる。


…大丈夫。

すぐに取って戻ってこれば、まだ間に合う。


それに――。


『言っておくが、くれぐれも桜華だけは――』

『もう、わかってるって!安心して。責任持ってわたしが預かるから』
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