時をこえて、またキミに恋をする。
煙が充満する部屋の中。

早く逃げないといけないのに、わたしは足首の痛みで思うように動けなかった。


せっかく桜華を取りにこれたのに――。

…これを宗治に渡すまでは。


床をはうようにして、必死に部屋の外を目指す。


「…ゲホッ!ゲホッ!」


だけど、足の痛みと息苦しさで脱出するのは困難な状況に陥ってしまっていた。


ふと…視界がゆらゆらと揺れる。


あれ…、おかしいな…。

…わたし、どうしちゃったんだろう。


なんとか保っていた意識すら薄れていって、気を失おうとした――そのとき。


わずかに開いた目に映ったのは、…黒い人影。


「…びぃ!びぃっ!」


そうして、わたしの体を抱き起こしたのは……なんと宗治だった!


「…宗治……?」


朦朧とする意識の中でつぶやくと、目の前にいる宗治が大きく息を吸い込んだ。
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