時をこえて、またキミに恋をする。
「どうかした?」

「宗治くんっ…!」


菅さんは、涙がたまる瞳で俺を見つめた。


「そういえば、…びぃは?」


さっきまで、菅さんのそばにいたはずだけど――。


すると、菅さんは視線を落とした。


「…いないの」

「え?」

「都美…、いなくなっちゃったの」

「いなくなったって…」

「…宿の中に戻って行っちゃったの!」


俺の腕をつかむ菅さんの手が小刻みに震えている。


…どういうことだよ、それ。

宿って…、あの燃えてる旅館のことだろ?


「どうしよう…。あたし、都美を止めたんだけどっ…」


そう言って、泣きじゃくる菅さん。

俺の額から、冷たい汗が流れ落ちた。


そのとたん、体が勝手に動いた。


「どこ行くの!?…宗治くん!」

「びぃは、必ず俺が連れ戻す!」
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