時をこえて、またキミに恋をする。
「おっ…下ろして、宗治!」

「下ろすか、バカ!しっかりつかまってろ!」


暴れるびぃの体を封じるように、ぐっと力を入れて抱き寄せた。


その後、俺たちは無事に外へ脱出することができた。


火事の現場へ荷物を取りに戻ったびぃは、消防隊員と先生たちからしこたま怒られていた。

いい気味だ。


だが俺も、火事の知らせを聞いて急遽駆けつけたびぃの父ちゃんに恐ろしいくらいに説教されることに…。


「なんで桜華を勝手に持ち出したんだ!!」


…びぃの父ちゃんには頭が上がらない。

だから俺は、ただただ平謝りするしかなかった。



次の日の夜。

縁側に座って、俺の時代と現代を繋ぐ御神木の桜の木をぼんやりと眺めていた。


虫が鳴く音しか聞こえない、静かな夏の夜だった。

昨日のあの緊迫した出来事が嘘のようだ。
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