転生悪女の幸せ家族計画~黒魔術チートで周囲の人達を幸せにします~【書籍化+コミカライズ準備中】
39 予想外のお出かけ
夜会に着ていくドレスが決まり、ようやく着せ替え人形の役目が終わったアルデラはホッと安堵のため息をついた。
(ドレスはこれで準備できたわね。あとは、念のため街の魔道具屋に行って、黒魔術の代償として使えるアクセサリーを買って……。あ、そうそう、公爵家当主の証のブローチもお店に預けたままだったわ)
街まで取りに行かなければと思ったけど、アルデラは護衛を頼める人がいないことに気がついた。
(今回はサッと道具屋にだけ行って帰ってきたいのよね。でも、ブラッドはキャロルを探りに行ったし、コーギルはサラサの監視中。セナはノアの護衛中……)
玄関ホールに向かって歩いているうちにアルデラは「まぁいっか。明日、一人で行こうっと」という答えにたどり着いた。
「どこへ?」
背後から優しく尋ねられて振り返るとクリスがいた。
「え、ああ、ちょっと明日、街へ買い物に行ってきます」
「一人で?」
「はい」
「護衛もつけずに?」
「はい。今はみんな忙しいので」
クリスはニッコリと微笑むと「じゃあ、私が一緒に行くよ」と言い出した。
(え? クリスと馬車で二人っきりって気まずいにもほどがあるんだけど……)
どうやって断ろうかと考えていると、クリスは「実は私も街に行く用事があってね。明日行こうと思っていたんだ」と教えてくれる。
「そうなのですね」
馬車は一台しかないので、それなら一緒に行くしかなさそうだ。
「わかりました。では一緒に行きましょう」
そういう流れで、クリスと一緒に出掛けることになった次の日。
出発前に、ノアが「姉様、ぼくも行きたい……」と言った。
「うーん……」
ノアがくるとセナにも護衛にきてもらわないといけないので、さすがに馬車の中が狭くなってしまう。
アルデラはしょんぼりしているノアの髪を優しくなでた。
「ごめんね、ノア。また今度、一緒に行こうね」
「はい」
ニコリと笑ってくれたけど元気はない。
(夜会まではまだ日にちがあるし、今日はやめて今度また三人で買い物に行こうかしら?)
悩んでいるとクリスに「アルデラ」と名前を呼ばれ手を引かれた。
「行くよ」
「あ、ちょっと待って……」
クリスに引っ張られるまま、つい馬車に乗ってしまった。
「あ」
気がついたときには馬車の御者が扉を閉めていた。
(……乗ってしまったものは仕方ないわね)
馬車はゆっくりと動き出した。向かいに座っているクリスはニコニコと嬉しそうだ。
微妙な沈黙に耐えられずアルデラは口を開いた。
「クリス様は、どちらにご用が?」
「アルデラ、今は二人っきりだから敬語はいらないよ」
綺麗な青い瞳に見つめられ居心地が悪い。
(最近のクリス、なんだかやりづらいのよね……)
甘ったるいというか、優しすぎるというか。
(まぁ彼の行動は、すべて私の黒魔術のせいなんだけど……)
そう考えるとさすがに申し訳なくなってくる。
「ねぇクリス」
「なんだい?」
「ノアを助けて全てが終わったら、その時は貴方を自由にしてあげるからね」
「それって……」
クリスの顔から笑みが消えている。
「私の元から去って、君が自由になるってこと?」
「……? 貴方が伯爵家から出て行けと言うなら出て行くわ」
「そんなことは言わないよ」
「そう?」
そう言っていても黒魔術を解くと態度が変わるかもしれない。
(今、話しても仕方ないか)
それ以外、特に話すこともないので、アルデラは窓の外に広がる青空に目を向けた。
(ドレスはこれで準備できたわね。あとは、念のため街の魔道具屋に行って、黒魔術の代償として使えるアクセサリーを買って……。あ、そうそう、公爵家当主の証のブローチもお店に預けたままだったわ)
街まで取りに行かなければと思ったけど、アルデラは護衛を頼める人がいないことに気がついた。
(今回はサッと道具屋にだけ行って帰ってきたいのよね。でも、ブラッドはキャロルを探りに行ったし、コーギルはサラサの監視中。セナはノアの護衛中……)
玄関ホールに向かって歩いているうちにアルデラは「まぁいっか。明日、一人で行こうっと」という答えにたどり着いた。
「どこへ?」
背後から優しく尋ねられて振り返るとクリスがいた。
「え、ああ、ちょっと明日、街へ買い物に行ってきます」
「一人で?」
「はい」
「護衛もつけずに?」
「はい。今はみんな忙しいので」
クリスはニッコリと微笑むと「じゃあ、私が一緒に行くよ」と言い出した。
(え? クリスと馬車で二人っきりって気まずいにもほどがあるんだけど……)
どうやって断ろうかと考えていると、クリスは「実は私も街に行く用事があってね。明日行こうと思っていたんだ」と教えてくれる。
「そうなのですね」
馬車は一台しかないので、それなら一緒に行くしかなさそうだ。
「わかりました。では一緒に行きましょう」
そういう流れで、クリスと一緒に出掛けることになった次の日。
出発前に、ノアが「姉様、ぼくも行きたい……」と言った。
「うーん……」
ノアがくるとセナにも護衛にきてもらわないといけないので、さすがに馬車の中が狭くなってしまう。
アルデラはしょんぼりしているノアの髪を優しくなでた。
「ごめんね、ノア。また今度、一緒に行こうね」
「はい」
ニコリと笑ってくれたけど元気はない。
(夜会まではまだ日にちがあるし、今日はやめて今度また三人で買い物に行こうかしら?)
悩んでいるとクリスに「アルデラ」と名前を呼ばれ手を引かれた。
「行くよ」
「あ、ちょっと待って……」
クリスに引っ張られるまま、つい馬車に乗ってしまった。
「あ」
気がついたときには馬車の御者が扉を閉めていた。
(……乗ってしまったものは仕方ないわね)
馬車はゆっくりと動き出した。向かいに座っているクリスはニコニコと嬉しそうだ。
微妙な沈黙に耐えられずアルデラは口を開いた。
「クリス様は、どちらにご用が?」
「アルデラ、今は二人っきりだから敬語はいらないよ」
綺麗な青い瞳に見つめられ居心地が悪い。
(最近のクリス、なんだかやりづらいのよね……)
甘ったるいというか、優しすぎるというか。
(まぁ彼の行動は、すべて私の黒魔術のせいなんだけど……)
そう考えるとさすがに申し訳なくなってくる。
「ねぇクリス」
「なんだい?」
「ノアを助けて全てが終わったら、その時は貴方を自由にしてあげるからね」
「それって……」
クリスの顔から笑みが消えている。
「私の元から去って、君が自由になるってこと?」
「……? 貴方が伯爵家から出て行けと言うなら出て行くわ」
「そんなことは言わないよ」
「そう?」
そう言っていても黒魔術を解くと態度が変わるかもしれない。
(今、話しても仕方ないか)
それ以外、特に話すこともないので、アルデラは窓の外に広がる青空に目を向けた。