転生悪女の幸せ家族計画~黒魔術チートで周囲の人達を幸せにします~【書籍化+コミカライズ準備中】
51 アルデラVS王国一の策士
アルデラの視界の端でコーギルが腰の剣にふれるのが見えた。王子の後方でブラッドも剣を引き抜く体制を取っている。アルデラは二人を制止するように小さく首を左右に振った。
(この男には聞きたいことがある)
王子は「少しでも怪しい動きをしたら、人質を崖の上にでも転移させて落としてしまいますよ」と言いながら微笑んでいる。
アルデラは持っていたバスケットを床に下ろすと、降参するように両手を上げた。
「大人しくするわ。だから教えて。どうしてノアを狙うの?」
王子は少しだけ目を見開くと「ああ、あの女から聞きましたか」とキャロルに視線を向けた。キャロルはこの状況下でもボーッとしながらホールの隅にたたずんでいた。
「私のほうこそお聞きしたいのですが、貴女はどこまで情報をつかんでいますか?」
「……なんの話?」
アルデラが慎重に返すと、王子は綺麗な瞳を探るように細めた。
「サラサの悪行はもうバレていますね? 私がキャロルを利用しようとしたこともバレている。もしかして、私がレイヴンズ伯爵家の借金が減らないように手をまわしていたことにも気がついていましたか?」
驚くアルデラの表情をみて王子は「うん、これはまだバレていなかったようですね」と一人で納得する。
「どうして、そんなことを……? 貴方達は伯爵家にいったいなんの恨みがあるの?」
「恨みなんてありませんよ」
「じゃあ、どうして? なんのためにこんなひどいことを?」
王子は彫刻のように美しい笑みを浮かべた。
「伯爵が貴女を引き取ったからです」
「私……を?」
「そうですよ。黒魔術師は簡単に殺せない。しかし、私達は王家を脅かす黒魔術師という存在をこの世から消したい。だから、貴女をわかりやすく悪女に仕立て上げて世論を味方につけ弱体化させようと目論んでいました」
「それって……もしかして……」
時が巻き戻る前、アルデラは義理の息子のノアを殺害したという無実の罪で処刑された。
「今までのこと、すべて、私を悪女に仕立て上げるために……?」
「そうです」
王子は王を指さした。王の周りには黒い大蛇がまとわりついている。
「他人からの憎悪は、本来なら術者の力を弱めます。アレをあのように従えられるのは父上くらいのものでしょう。ですから、無実の罪でも国中の人間から恨まれたら、例え黒魔術師の貴女でも弱るのではないかと思ったのです」
王が「見事にすべての策を阻止されたがな」と豪快に笑っている。
どうやら、本物のアルデラが時を巻き戻す前の人生は、この王子の策略に嵌められた人生だったようだ。
(ノアが殺されてアルデラが悪女に仕立て上げられたんじゃなかった。アルデラを悪女に仕立て上げるためにノアが殺されたんだわ……)
「許せない……」
「貴女のせいですよ」
笑みを浮かべながら王子は淡々と語りかけてくる。
「貴女が伯爵家に行かなければ誰も苦しまなかった。レイヴンズ伯爵領は豊かなので、時間が経てば借金もなくなったでしょう。貴女のせいです。貴女が悪いのです」
アルデラは両手を握りしめた。
「ちがうわ……アルデラはとっても良い子だった……。アルデラは誰かを傷つけるような子じゃなかった! 王家への反逆なんて思いつくような子じゃない!」
「黒魔術師は悪です」
「悪人は貴方よ!」
「では、皆さんに聞いてみてはいかがですか? 貴女のせいで王家ににらまれてしまった伯爵家の方達に」
ニコッと王子に微笑みかけられて、アルデラはとっさに下を向いた。
前にはノアがいる。後ろにはクリスがいる。この話を聞いた二人がどんな顔をしているのか見るのが怖いと感じた。
(アルデラが……私がいなかったら大切な人達は誰も苦しまなかった……? 私のせいで……ノアが……クリスが……伯爵家の皆が……)
アルデラの身体が黒いモヤで包まれていく。王子からは「良いですね。自分自身を恨み始めた」と満足そうな声が聞こえる。
「姉様!」
ノアの声が聞こえた。
「姉様! 大好きです、姉様ぁ!」
ハッと顔を上げると遠くで泣きそうな顔をしているノアと目が合った。
「アル、家族を信じて」
その言葉と共に、クリスに後ろから抱きしめられた。胸の内に泣きたくなるような温かさを感じてアルデラは願った。
(王子の魔術を一時的に封じて)
アルデラが身につけていた全てのアクセサリーが砕け散り黒い炎に包まれる。
それを見た王子が「残念です」と呟きながら指を鳴らしたけど何も起きない。
「まさか……!?」
「そのまさかよ。貴方の魔術は一時的に封じたわ」
「黒魔術でそんなことまでできるなんて……」
「あら、サラサに聞かなかったの? 彼女、この方法でやられているけど?」
セナがノアを抱きかかえてアルデラの側に駆け寄った。
「人質は返してもらうわね」
王子の顔から余裕の笑みが消える。代わりにアルデラが微笑んだ。
「さぁ反撃の時間よ」
アルデラの言葉と共に、ブラッドとコーギルが剣を鞘から引き抜いた。
(この男には聞きたいことがある)
王子は「少しでも怪しい動きをしたら、人質を崖の上にでも転移させて落としてしまいますよ」と言いながら微笑んでいる。
アルデラは持っていたバスケットを床に下ろすと、降参するように両手を上げた。
「大人しくするわ。だから教えて。どうしてノアを狙うの?」
王子は少しだけ目を見開くと「ああ、あの女から聞きましたか」とキャロルに視線を向けた。キャロルはこの状況下でもボーッとしながらホールの隅にたたずんでいた。
「私のほうこそお聞きしたいのですが、貴女はどこまで情報をつかんでいますか?」
「……なんの話?」
アルデラが慎重に返すと、王子は綺麗な瞳を探るように細めた。
「サラサの悪行はもうバレていますね? 私がキャロルを利用しようとしたこともバレている。もしかして、私がレイヴンズ伯爵家の借金が減らないように手をまわしていたことにも気がついていましたか?」
驚くアルデラの表情をみて王子は「うん、これはまだバレていなかったようですね」と一人で納得する。
「どうして、そんなことを……? 貴方達は伯爵家にいったいなんの恨みがあるの?」
「恨みなんてありませんよ」
「じゃあ、どうして? なんのためにこんなひどいことを?」
王子は彫刻のように美しい笑みを浮かべた。
「伯爵が貴女を引き取ったからです」
「私……を?」
「そうですよ。黒魔術師は簡単に殺せない。しかし、私達は王家を脅かす黒魔術師という存在をこの世から消したい。だから、貴女をわかりやすく悪女に仕立て上げて世論を味方につけ弱体化させようと目論んでいました」
「それって……もしかして……」
時が巻き戻る前、アルデラは義理の息子のノアを殺害したという無実の罪で処刑された。
「今までのこと、すべて、私を悪女に仕立て上げるために……?」
「そうです」
王子は王を指さした。王の周りには黒い大蛇がまとわりついている。
「他人からの憎悪は、本来なら術者の力を弱めます。アレをあのように従えられるのは父上くらいのものでしょう。ですから、無実の罪でも国中の人間から恨まれたら、例え黒魔術師の貴女でも弱るのではないかと思ったのです」
王が「見事にすべての策を阻止されたがな」と豪快に笑っている。
どうやら、本物のアルデラが時を巻き戻す前の人生は、この王子の策略に嵌められた人生だったようだ。
(ノアが殺されてアルデラが悪女に仕立て上げられたんじゃなかった。アルデラを悪女に仕立て上げるためにノアが殺されたんだわ……)
「許せない……」
「貴女のせいですよ」
笑みを浮かべながら王子は淡々と語りかけてくる。
「貴女が伯爵家に行かなければ誰も苦しまなかった。レイヴンズ伯爵領は豊かなので、時間が経てば借金もなくなったでしょう。貴女のせいです。貴女が悪いのです」
アルデラは両手を握りしめた。
「ちがうわ……アルデラはとっても良い子だった……。アルデラは誰かを傷つけるような子じゃなかった! 王家への反逆なんて思いつくような子じゃない!」
「黒魔術師は悪です」
「悪人は貴方よ!」
「では、皆さんに聞いてみてはいかがですか? 貴女のせいで王家ににらまれてしまった伯爵家の方達に」
ニコッと王子に微笑みかけられて、アルデラはとっさに下を向いた。
前にはノアがいる。後ろにはクリスがいる。この話を聞いた二人がどんな顔をしているのか見るのが怖いと感じた。
(アルデラが……私がいなかったら大切な人達は誰も苦しまなかった……? 私のせいで……ノアが……クリスが……伯爵家の皆が……)
アルデラの身体が黒いモヤで包まれていく。王子からは「良いですね。自分自身を恨み始めた」と満足そうな声が聞こえる。
「姉様!」
ノアの声が聞こえた。
「姉様! 大好きです、姉様ぁ!」
ハッと顔を上げると遠くで泣きそうな顔をしているノアと目が合った。
「アル、家族を信じて」
その言葉と共に、クリスに後ろから抱きしめられた。胸の内に泣きたくなるような温かさを感じてアルデラは願った。
(王子の魔術を一時的に封じて)
アルデラが身につけていた全てのアクセサリーが砕け散り黒い炎に包まれる。
それを見た王子が「残念です」と呟きながら指を鳴らしたけど何も起きない。
「まさか……!?」
「そのまさかよ。貴方の魔術は一時的に封じたわ」
「黒魔術でそんなことまでできるなんて……」
「あら、サラサに聞かなかったの? 彼女、この方法でやられているけど?」
セナがノアを抱きかかえてアルデラの側に駆け寄った。
「人質は返してもらうわね」
王子の顔から余裕の笑みが消える。代わりにアルデラが微笑んだ。
「さぁ反撃の時間よ」
アルデラの言葉と共に、ブラッドとコーギルが剣を鞘から引き抜いた。