転生悪女の幸せ家族計画~黒魔術チートで周囲の人達を幸せにします~【書籍化+コミカライズ準備中】
58 仰せのままに【ブラッド視点】
レイヴンズ伯爵家に平和が戻った。
借金もなくなったし、もうノア坊ちゃんが殺されることもない。
お金が入ると自然と伯爵家に人が戻ってきた。書類仕事から解放されたブラッドは伯爵家に入ってきた新人騎士達をしごきながら充実した毎日を送っていた。
(こんな穏やかな日常が過ごせるのも、すべて我が女神アルデラ様のおかげだ)
平和になった今だからこそ、その平和に導いてくれたアルデラの偉大さが身に沁み、ブラッドの信仰心はますますあつくなっていた。
「ブラッド団長―!」と声をかけられ振り返ると、副団長のコーギルがこちらに手を振っていた。その横にはアルデラの姿がある。
ブラッドが慌てて駆け寄るとアルデラはため息をついた。
「アルデラ様、どうなさいましたか!?」
「実は、ブラッドにお願いがあるのだけど……」
お願いの内容を聞く前にブラッドは「私にお任せください!」と勢い良く返事をした。
「待って。まだ内容を説明していないわ」
「アルデラ様のお願いなら、このブラッドどんな内容でもお受けします!」
アルデラは何か言いたそうであり、あきれたようでもある微妙な表情を浮かべた。
「そう……ありがとう」
「で、その内容とは?」
「実は、殿下がなかなか私との結婚をあきらめてくれなくて……」
ブラッドが「切りますか?」と言うと、コーギルが「切りましょう」と頷く。
アルデラは「それは最終手段よ」と優雅に微笑む。
「殿下にどうしたらあきらめてくれますかって聞いたら、私の代わりにブラッドをくれたらあきらめるって言われたの」
「私、ですか?」
「そう、ブラッドを王宮騎士団長に任命したいんですって」
淡々と告げられてブラッドの思考は一瞬固まった。アルデラの言葉を頭の中で繰り返し、少しずつ理解していく。
「私が王宮騎士団長……ですか?」
「そう。ほら、ちょうど今、席が空いているでしょう? 元騎士団長が治めていた領地も空いているから、引き受けてくれたらブラッドには、それなりの土地と爵位もあげるって言っていたわよ。悪い条件ではないと思うけど」
アルデラが首を傾げると、美しい黒髪がサラリと流れた。
「私が……爵位……?」
貧乏男爵家の三男に生まれて王宮騎士団にすら入れなかった男が、王子の意向で王宮騎士団長に任命される。
安っぽい夢物語でもそんなバカな話はない。決して信じることができない。でも、女神アルデラが言うならばすべて真実だ。
ブラッドは片膝をついてひざまずいた。
「お受けいたします」
「そう、良かったわ。ありがとう」
フワッと微笑みかけられて『この方も穏やかな表情をされるようになった』とブラッドは思った。
クリスとはうまくいっているようだ。その事実がクリスの友としてもアルデラ信者としても、とても嬉しい。
「アルデラ様はノア坊ちゃんを助けるだけではなく、私までも導いて幸せにしてくださるのですね」
「ん? ブラッド、何か言った?」
つい漏れてしまったブラッドの呟きは、アルデラには聞こえなかったようだ。
こうして騎士団長に任命されたブラッドは、王子と共に王宮騎士団の不正を一掃。初めは戸惑っていた王宮騎士団員達も、腕が立つ上に頭も切れるブラッドに自然と従うようになっていった。
そのあとのブラッドは権力に媚びず弱き者や正しき者を助ける一方、悪しき者には一切の慈悲も見せない苛烈さから人々から『高潔な断罪者』と呼ばれることになる。
王宮騎士団長ブラッドは信仰している神を聞かれるたびに「女神アルデラ様に決まっている」と答え続け、本当に女神アルデラを讃える神殿を建ててしまうことをまだ誰も知らない。
ちなみに神殿を建てる際にアルデラに「バカなことはやめなさい!」と本気で怒られるが「例えアルデラ様の命令でも、これだけは絶対に譲れません!」と、初めてアルデラの命令に背くことになるのだった。
借金もなくなったし、もうノア坊ちゃんが殺されることもない。
お金が入ると自然と伯爵家に人が戻ってきた。書類仕事から解放されたブラッドは伯爵家に入ってきた新人騎士達をしごきながら充実した毎日を送っていた。
(こんな穏やかな日常が過ごせるのも、すべて我が女神アルデラ様のおかげだ)
平和になった今だからこそ、その平和に導いてくれたアルデラの偉大さが身に沁み、ブラッドの信仰心はますますあつくなっていた。
「ブラッド団長―!」と声をかけられ振り返ると、副団長のコーギルがこちらに手を振っていた。その横にはアルデラの姿がある。
ブラッドが慌てて駆け寄るとアルデラはため息をついた。
「アルデラ様、どうなさいましたか!?」
「実は、ブラッドにお願いがあるのだけど……」
お願いの内容を聞く前にブラッドは「私にお任せください!」と勢い良く返事をした。
「待って。まだ内容を説明していないわ」
「アルデラ様のお願いなら、このブラッドどんな内容でもお受けします!」
アルデラは何か言いたそうであり、あきれたようでもある微妙な表情を浮かべた。
「そう……ありがとう」
「で、その内容とは?」
「実は、殿下がなかなか私との結婚をあきらめてくれなくて……」
ブラッドが「切りますか?」と言うと、コーギルが「切りましょう」と頷く。
アルデラは「それは最終手段よ」と優雅に微笑む。
「殿下にどうしたらあきらめてくれますかって聞いたら、私の代わりにブラッドをくれたらあきらめるって言われたの」
「私、ですか?」
「そう、ブラッドを王宮騎士団長に任命したいんですって」
淡々と告げられてブラッドの思考は一瞬固まった。アルデラの言葉を頭の中で繰り返し、少しずつ理解していく。
「私が王宮騎士団長……ですか?」
「そう。ほら、ちょうど今、席が空いているでしょう? 元騎士団長が治めていた領地も空いているから、引き受けてくれたらブラッドには、それなりの土地と爵位もあげるって言っていたわよ。悪い条件ではないと思うけど」
アルデラが首を傾げると、美しい黒髪がサラリと流れた。
「私が……爵位……?」
貧乏男爵家の三男に生まれて王宮騎士団にすら入れなかった男が、王子の意向で王宮騎士団長に任命される。
安っぽい夢物語でもそんなバカな話はない。決して信じることができない。でも、女神アルデラが言うならばすべて真実だ。
ブラッドは片膝をついてひざまずいた。
「お受けいたします」
「そう、良かったわ。ありがとう」
フワッと微笑みかけられて『この方も穏やかな表情をされるようになった』とブラッドは思った。
クリスとはうまくいっているようだ。その事実がクリスの友としてもアルデラ信者としても、とても嬉しい。
「アルデラ様はノア坊ちゃんを助けるだけではなく、私までも導いて幸せにしてくださるのですね」
「ん? ブラッド、何か言った?」
つい漏れてしまったブラッドの呟きは、アルデラには聞こえなかったようだ。
こうして騎士団長に任命されたブラッドは、王子と共に王宮騎士団の不正を一掃。初めは戸惑っていた王宮騎士団員達も、腕が立つ上に頭も切れるブラッドに自然と従うようになっていった。
そのあとのブラッドは権力に媚びず弱き者や正しき者を助ける一方、悪しき者には一切の慈悲も見せない苛烈さから人々から『高潔な断罪者』と呼ばれることになる。
王宮騎士団長ブラッドは信仰している神を聞かれるたびに「女神アルデラ様に決まっている」と答え続け、本当に女神アルデラを讃える神殿を建ててしまうことをまだ誰も知らない。
ちなみに神殿を建てる際にアルデラに「バカなことはやめなさい!」と本気で怒られるが「例えアルデラ様の命令でも、これだけは絶対に譲れません!」と、初めてアルデラの命令に背くことになるのだった。